課題
活用方法
成果/これからの目標
「初期費用なしで新店を出す感覚」社食提供のチャレンジと手応え
有名店社食「みんなの社食」では、「きすけ」をはじめとする食べログ百名店や高評価を獲得する人気飲食店*と提携して社食を提供しています。今回お話を伺ったのは、東京・赤坂に店を構える「秋田比内地鶏 きすけ 赤坂本店」。店主と奥様が二人三脚で調理から運営までを担う個人店でありながら、早期から本サービスに加盟しています。 一人体制で数十食を追加調理するオペレーションへの不安やブランド毀損のリスクといった飲食店側の懸念をどう解消したのか。導入後の手応えや、実店舗の枠を超える収益ポテンシャルについて、詳しくお話を伺いました。
*加盟飲食店名(一部):https://minshoku.jp/lp02/
(1)店舗紹介|秋田比内地鶏 きすけ 赤坂本店
東京・赤坂で20年の歴史を誇る「きすけ」。看板メニューの親子丼は、秋田産比内地鶏を贅沢に使用し、絶妙な火入れによる茨城産奥久慈卵の半熟感が重なる至極の一品です。鶏本来の濃厚な旨味が、砂糖を使わず醤油とみりんだけで仕込んだオリジナルの割下と相まって白いご飯との相性は抜群です。

(2)「みんなの社食」に加盟した理由|店舗以外での新たな収益源が欲しかった
「きすけ」は店主と奥様で運営から調理を行う個人飲食店。手書きの手紙でぜひ参加して欲しいと熱意をお伝えし、その内容と熱意から商談前にほとんど決意していたといいます。
── お会いする前から、ある程度前向きに考えられていたのでしょうか? 店主:「ほぼやるだろうな」と自分の中では決めていました。いただいたお手紙を読み進めるうちに、自分が薄っすらと思い描いていた「次のビジョン」と重なる部分があると感じ、齋藤さん(担当者)にお電話したんです。
── 最初に惹かれたポイントを教えてください。
店主: 飲食店は、ホテルの客室と同じで席数が決まっています。回転数によって売上が変わるので、どうしても一店舗で売り上げる上限が決まってしまう。それが、いわゆるアウトソーシングすることによって、店舗以外で新たに利益を得られる点に惹かれました。
■大きな魅力は「初期投資がかからない」店舗外での収益確保
店舗以外での収益確保として、以前からキッチンカーや競馬場・Bリーグ(バスケットボール)といったイベントへの出店を考えていたと話します。
── 具体的に何が懸念だったのでしょうか?
店主: キッチンカーやイベントへの出店を考えていましたが、移動用冷蔵庫やタペストリーといった初期投資が結構掛かります。もしイベント出店の権利が取れなくなったら、その設備も邪魔になるだけ。いつ終わるかも分からないので、二の足を踏んでいました。
そんな時に「みんなの社食」のお話を聞いて、お皿やスプーンといったカトラリーや販売環境はすべて用意されてこちらは作るだけでいいと聞いて「えっ、すごい簡単じゃん!」というのが第一印象でした。
── 「デリバリーサービス」と比較するといかがでしょうか?
店主:よく営業の方に「ピークタイムは外せますよ」と言われるんですね。
でも、ピークタイムにやらないと売れないわけですよ。かといって、ピークタイムに注文が入ると本当に大変です。その時間はとにかく店内のお客さんを優先したいのが正直なところですね。
── 社食の場合はアイドルタイムで調理と配送準備が完了*するのでうまく時間が合致しているんですね。初期投資が不要という点も大きな要因でしたか?
店主: 事業をする側として初期投資が不要というのは本当に大きなメリットですね。「本当にゼロか」というのはあるかもしれないですが、現状ではそう感じています。
その簡単さと、有名店社食というサービスの可能性・未来に惹かれて加盟を決意しました。
*「みんなの社食」では、お昼のピークタイム前に調理を終えた料理を、貸与しているジャーやホテルパンごとドライバーが集荷して直接オフィスへお届けしています。

(3)加盟後の変化|外部要因に囚われない安定した収入が心の余裕に繋がる
コントロールできない外部要因がダイレクトに売上に影響する飲食店。特に天気の影響は大きく、真夏、真冬、雨、雪によって売上が約半分まで落ちてしまうほど大打撃を受けることもあるそう。 他にも風評被害や、物価上昇によるやむを得ない値上げでさらにお客さんが減ってしまうリスクに対し、「みんなの社食」での安定した売上が支えになっているといいます。
── 「みんなの社食」のメリットを実感している部分はありますか?
店主: 私はこの仕事を始めて4年目なのでまだ日々勉強中ではありますが、やっぱりコロナで売上が立たなくなった時に、保証がない。自分で店を閉めた時点でもう一切収入がなくなってしまう。 そういった場合に、安定した収入を得られるという点で、「みんなの社食」は飲食店側としてもすごく良い取り組みになると思うんですよね。
── やはり「売上の変動」は飲食店の抱える大きな課題でしょうか?
店主: どの店でも「お客さんが来るか来ないか」が一番の問題じゃないでしょうか。プラスで「みんなの社食」の売上見込みがあれば、「みん食さん分は安心して確保できるね」というふうに計算もできますし、心にも余裕が持てるようになりましたね。

(4)提供前のハードルや不安|現場でホットな料理を提供できるアドバンテージ
見た目でお客さんに喜ばれる部分も大きい「きすけ」の親子丼。蓋を開けた時に「あのキラキラした半熟のトロトロ感を社食でも体験してほしい」という思いがあり、店舗で提供する親子丼と差がでてしまいお店のブランドを毀損してしまう不安があったと言います。
── 導入当初、不安だった点やハードルはありましたか?
店主: やはり一番は、作ってすぐの提供ではないという部分ですね。時間が経つことによって、卵に火が入りすぎてしまう。 でもプラスに考えれば、自分が作った料理なので味ブレを心配する必要がない。「みんなの社食」は冷たいお弁当ではなく、現場で温かいものを食べてもらえる。そのアドバンテージが大きいので、お店の味に多少でも追随できていれば大丈夫かな、という思いはありました。
── 実際に提供する前にまずは何度かテストとして試作していただきましたね。
店主: やってみないと分からない部分が多かったので、まずはやってみて少しずつ改良していける環境があったのは助かりました。 最初は着地点が見えなくて不安でしたが、テスト運用を続け試作を重ねる中で片栗粉を入れてみたり、汁の量やタレの量を増やしてみたり、卵を増減してみたり…といろいろ試した結果、今の段階で一番いい形に落ち着いたという感じですね。
── お客さんの実際の声も参考になりましたか?
店主: 毎回確認していたのですが、ある時から(気になるような)フィードバックが返ってこなくなったんです。その時に「あ、これでいいんだな」と。まだ改善点はありますが、お客さんが喜んで食べてくれている話を聞くと、一つハードルをクリアしたかなと思えました。
今でも提供方法については、より良くするために改善を続けています。

(5)今後の目標|実店舗の売上限界を超えるポテンシャルを感じている
── 今後の目標として、どのくらいの規模まで伸ばしていきたいと考えていらっしゃいますか?
店主: 当面の目標は、この社食事業で年間売上1,000万円を出したいですね。計算してみたら、1日60杯で年間1,080万円程の計算になったんです。例えば毎日でなくても週3日で300食出せばいい。かなり現実に近づいた数字だなと思っています。
── 実店舗以上の収益源になることも想定されているのでしょうか。
店主: 今後この事業が伸びて2,000万、3,000万となれば実店舗の売上を超えてくる。店舗を増やさずにここまで売上が上がるポテンシャルは、どこの飲食店にとっても最大の魅力ですよね。
── 頻度や食数を増やすと労働時間の負担も増えますが、そのあたりの調整はいかがでしょうか?
店主: 一度、「1週間、毎日提供」を試してみたいと思っています。やってみないとわからないですからね。 今は無理のない範囲で週2日ですが、毎日、月~金曜日に50杯以上を出してみて「これならできるな」「この日だけは入れないでほしい」というのが、見えてくると思います。
「きすけ」では現状1日に約50食を提供していただいていますが、それ以上の提供を可能にするために食品や物資を置く新たな場所を借りることも考えていると言います。

(6)新しく直面した課題|個人店が抱える仕事量の負担
以前とは異なる悩みとして、仕事の開始が早まり、厨房に立つ時間が増加したことを挙げています。10年後の体力面への不安も見据え、現在は新たなスタッフの採用も検討していると言います。
── 現場では大将(店主)しか作れる方がいない、という点もハードルでしょうか?
店主: そうなんです。もう一人いればいいのですが、やはり不安もあります。自分が見ていない時に出荷して、後から「味が違う」「米がべちゃべちゃだった」というのは避けたい。米の硬さひとつとっても、その時の水の量を考えて感覚でやっているので、マニュアル化が難しいんです。 これは個人店ならどこも抱える問題だと思いますが、自分の方で確立していこうと思っています。
── 「みんなの社食」でのオペレーションのトラブルはありましたか?
店主:一つ言うとしたら、料理自体はスムーズにできてしまうので回収車を待つ間に「冷めてしまわないか」という”そわそわ感”はありますね。(笑)それぐらいですね。
(7)「みんなの社食」の効果|新店を出した感覚「味」でお店を宣伝できる
「みんなの社食」で提供を始めてみると、「もう一軒、新しいお店を出したような感覚に近い」と話してくださいました。店舗という枠を超え、普段お店に来ることができない人たちに食べてもらえる点が面白さにも繋がっているそうです。
── 「みんなの社食」は宣伝としてのメリットも感じていますか?
店主: 何よりもお店の販路の裾野がバーっと広がって知らない方にも知ってもらえる。宣伝効果としてはかなり高いので、すごく期待しています。
1,000人に伝えて10人来ればいい、程度の感覚で、まずは知ってもらうことが大切だと思っています。
自分たちで発信しなくても、文字や写真ではなく「味」でダイレクトにお店の存在を届けられるのは、すごい強みですよね。
── 通常の広告宣伝はどこでもできますが、費用も掛かりますよね。
店主:しかも宣伝が『4D』なんですよ!(笑)それが面白い。だからこそ、こっちも極力お店のクオリティに近づけて「これが社食で食べられるの?」と思ってもらいたいですし、お店に来た時に「店はもっとうまいじゃん!」って驚いてもらいたいですね。

(8)飲食店の方に向けて|コストと味の「着地点」
実際に運用してみると、自身のイメージ通りに動くことができ、大きな混乱もなかったそう。「最初は大量に作って大丈夫かな?という不安もありましたが、テストをやっていく中で慣れました」と語ります。
── これから導入を検討される飲食店、特に個人店の方に向けて、オペレーションのコツやアドバイスはありますか?
店主:一人で切り盛りされている店舗なら、何より「前日までの仕込み」が重要になります。オペレーション自体は「一食ずつ作るのが、一度に十食ずつになる」と、普段の仕事の延長線上で捉えれば大丈夫だと思います。配膳がない分、盛り付けもスムーズですし、事前に手順をイメージしておけば大きな問題はないと思います。
■デリバリーとは全く異なる「みんなの社食は"協業"に近い関係性」
── 味を守りながら、着地点を見つけていく作業が必要ですかね。
店主: そうですね。コストがかかっても味は守りたい。そこは今後、提供杯数を増やすことでカバーしていきたいですね。 何か一つ味を変えるだけでも、大きなコストがかかります。だからこそ、お互いに意見を出し合いながら、良い着地点を見つけていく。単なる受発注の関係ではなく、一緒にビジネスを作っていける感覚が、このサービスの良さだと感じています。
── 一緒につくりあげている感覚を持ってくださっているのは、私たちも嬉しいです。
店主: デリバリーサービスなどとは、全くの別物だと思っています。本当の意味で「協業」してお料理を提供している感覚が強い。お互いに利益を出し合い、高め合える「ビジネスパートナー」として、Win-Winな関係を築けていると実感しています。

(9)最後に|お客様へのメッセージ
── では最後に「きすけ」の親子丼を食べている方々へメッセージをお願いします。
店主: きすけの親子丼を食べていただいてありがとうございます。こんなことを言うのはなんですが、ぜひお店でも食べてみてください。本当の親子丼を食べられると思いますので、よろしくお願いします。
編集後記
飲食店の方々からはよく、「本当に需要があるサービスなんですか?」「皆さん、わざわざビュッフェ形式で食べるんですか?」と聞かれることがあります。しかし、オフィス街における「ランチ難民」の実態は、想像以上に切実です
今回の「きすけ」さんに加盟いただいたきっかけは、私たちからの熱烈な手紙でした。「あえてアナログな手法でアプローチしてくださったことに心を打たれた。」と大将(店主)が仰ってくださったことは、私たちにとっても忘れられません。
お会いする度に「みんなの社食の提供方法で親子丼をどうしたらもっと美味しくできるか」を何度も検討してくださっている姿に、職人魂を感じて胸が熱くなります。ぜひ、一度「きすけ」の親子丼を食べてみてください。
これからも、大将の想いが込められた親子丼を、熱々の美味しい状態でオフィスへ届けていきたいと思います。
「働く人のランチを楽しく、豊かに」
今日もどこかで、誰かがふぅと息をつき、温かい食事で笑顔を取り戻す。 そんな当たり前で、かけがえのない景色を一つでも増やしていくために。
「みんなの社食」の挑戦は、まだ始まったばかりです。